戻ります

 波の音が過ぎてゆく。
 夕陽が私たちをオレンジ色に染める。
 なにもせず、言葉も交わさず、ただ寄り添いあいながら、心地良く流れる時間に身を任せる。
 静かだった。
 まるで世界には、私たち二人しかいないみたい。
 私と、冬弥くんと――。

「理奈ちゃん、寒くない?」
 その質問は、どこかおかしかった。
 日本ではもうすぐ冬。だけど、間もなく夏に入るこの南の島で、寒いはずもない。
 水着一枚きりだけど、風さえも滑らかな暖かさを運んでくる。
 だけど、
「ふふ……寒いよ」
 冬弥くんの肩に、頭を乗せる。
 触れあった剥き出しの腕から、熱が伝わる。
 冬弥くんはちょっと困っていたけど、すぐに私の肩を抱いてくれた。
「……これでいい?」
「うん……暖かい。ずっとこうしていたいくらい」
 こんなに人と触れあうのが心地良いなんて思わなかった。
 静かな時間は好きだった。だけど、それは私一人きりの時間だったはずだった。
 大勢の人に囲まれて、熱狂に身を任せるのは楽しくもあったけど、時に鬱陶しくもあった。
 だから休みの時間には、極力人を近づけず、一人で、静かに休んでいた。
 なのに、今はこの人と二人でいるのが、一番大事。
「不思議……」
「え、なにが?」
「なんでもない」
 肩に回された腕に、そっと手を重ねた。
「冬弥くん……」
 私は顔を、冬弥くんに向ける。
 瞳を閉じ、心持ち上を向く。
 少しの間があって、吐息が近づいてきて、そして、柔らかな感触が唇に重なった。
 何度も何度も交わされた口付け。 
 だけど飽きることはなく、むしろ前よりももっと、愛おしさと恋しさが募る。
 私はちょっといたずらして、舌でぺろりと唇を舐めた。
「……っ」
 びっくりした冬弥くんは、お返しに私の唇を舌で舐める。
 そんないたずらがエスカレートして、舌と舌が絡まり合う。
 深く唇を重ねて、お互いの味を混ぜあう。
 とろけそうな感触が舌から伝わって、脳を痺れさせる。
 冬弥くんの舌が歯茎の隙間に滑り込み、ついで上顎をくすぐる。
「んっ……ふ…………」
 私がそこが弱いのを知ってて、わざと何度も上顎をつつく。
 空いている手が髪に差し込まれ、耳の裏側を撫でた。
 なにかがじゅわっと溢れる感触がした。
 たまらなくなって冬弥くんの腕をきつく掴む。
 驚いたのか、冬弥くんの舌は離れてしまった。
 二人の唇の間に、銀色の糸が結ばれ、砂に黒い染みを落とした。
「ごっ、ごめん……。俺、調子に乗っちゃって……」
「もう……」
「ほんとにごめん……」
「そうじゃなくって」
 言い訳を重ねようとした唇を、指で遮る。
「やめなくてもいいのに、やめたのが不満なの」
 ここは私たち以外誰もいないプライベートビーチ。遠慮なんかして欲しくなかった。
「だから……ね?」
「あ……うん……」
 もう一度、深く唇を重ねた。
「あ……」
 熱を残した砂浜の感触が、背中に触れる。
 夕陽を背にし、私に覆い被さった冬弥くんの顔は、逆光が深い影を落としていた。
 だけど、その瞳の優しさは消えない。
 もう一度額にキスをして、水着の上から私の胸に触れる。
「んっ……」
 柔らかく食い込んでくる、冬弥くんの指。 
 優しく、優しく私の胸を撫でるように揺らす。
 だけど、力は徐々に強く、冬弥くんの息は荒くなってゆく。
 それに伴い、伝わる感覚も強く、激しくなる。
 強くこねられ、押し上げられ、きつく絞られる。
 左手も加わって、交互に両方の胸を揉み上げてくる。
「ん……はぁっ………」
「理奈ちゃん……、感じてきた……?」
「やだっ……」
 胸の先端に疼きが集まる。見てなくても、固く尖っているのが自分で分かる。
 冬弥くんがそこを、ちょん、ちょんと指でつついた。
「あっ……やだ、冬弥くん……んんっ!」
 水着を押し上げるほど尖っているそこを、人差し指と親指で、きゅっと摘まれた。
 敏感になっている部分を、摘んだまま上下にしごく。
 逆側の胸はくりくりとひねられ、強く押し潰された。
「んっ……く……あぁ〜〜〜〜っ………」
 胸の先端から電気が走ったような快感が湧いて、声を上げさせる。
 たまらず足を開いたり閉じたりするけど、冬弥くんの体が間に挟まっていて、自由にならない。
 私はただ指を噛んで、冬弥くんが送ってくる刺激に耐えた。
 でも……。
 ちゅっ。
「ひゃぁんっ!」
 そこにキスをされたら、耐えられるはずもなかった。
「と、冬弥くん……冬弥くんっ……!」
 私の胸に吸い付いてくる冬弥くんの唇。
 ざらついた生地の上から、生暖かく、自在に動く舌が、私の乳首に絡みつく。
 固く尖った蕾を転がし、下から上へ舐め上げ、きつく吸引する。
 きゅん、と胸を締め付けるような感覚に襲われる。
 愛おしさと、喜びと、快感が混じり合って、私の胸を熱く灼く。
 びくん、びくんと、股間が熱く疼いた。
「あっ……ああっ………くぅ……んっ…………」
 ようやく冬弥くんの唇が離れると、自分でも恥ずかしくなるくらい水着を押し上げ、高くそそり立っている私の胸の先。
「はぁ……はぁ……」
 互いに荒い息をもらし、次の段階へと、呼吸を整える。
「水着……脱ぐね……」
「うん……」
 私はワンピースの水着から、腕を抜き、腰までめくり下げる。
 解放された胸が、弾かれたようにぷるんと揺れた。
 先端はすっかり固く、赤くなって、愛撫の続きを待っている。
 冬弥くんが唾を飲む音が聞こえた。
「やだ……あんまり見ないでよ……」
「あ……ごめん……。でも……見たい。だめかな……?」
「もう……」
 さすがに明るいところでは少し恥ずかしかった。
 でも、何度も肌を重ねて、今さら恥ずかしがるのも変な話だった。
「それじゃ……脱ぐね……」
「うん……」
 張りつく生地を引き剥がすように、腰にまとわりついた水着を下ろしてゆく。
 私の茂みと、その下の割れ目が、夕陽に照らし出された。
 割れ目から雫が溢れて、腿を伝った。
「理奈ちゃん……濡れてる……」
「ばか……」
 水着を足首から抜いて、傍らに投げると、冬弥くんが腰に抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと冬弥くん……あっ!」
 股間に顔を埋めて、腿から上に向かい、溢れている雫の道を辿る。
 太腿に花びらの痣をつけ、内股を舌でなぞって、割れ目に沿って舐め上げる。
「んふっ……」
 鼻先を茂みに埋め、溢れてくる蜜を何度も何度も舐めすくう。
 だけどその度に、割れ目の奥から新しい蜜がじゅんと溢れて、冬弥くんの顔を濡らす。
「あっ……ああっ…………」
 冬弥くんの舌が動くたびに、私の腰が砕けそうになる。
 私は体を震わせながら、冬弥くんの頭に手を乗せ、必死で体を支えていた。
「理奈ちゃん……」
 熱に浮かされたように冬弥くんが呟く。
 冬弥くんは両手の指を私の割れ目に添え、ぐっと押し開いた。
 途端に花奥に溜まっていた蜜があふれ出て、恥ずかしいぐらいに太腿を濡らす。
 冬弥くんの荒い息が、直接体の奥に吹き込んでくる。
「や、やだっ……」
 深く、舌が潜り込んできた。
「ああんっ!」
 まるで生き物みたいに蠢く舌が、私の体の中で暴れる。
 襞に沿ってなぞり、天井をくすぐり、肉をこね合わせる。
 体が勝手に反応して、きゅっと冬弥くんの舌を挟みこむと、反発するように暴れて、かえって強い快感を生み出す。
 ドクン、ドクンと体の中を液体が流れていく感触に、脳が痺れる。
 冬弥くんは、息をつくために口を離すと、今度は狙いを変えてきた。
 割れ目の上でつやつやと濡れ光る、真珠色の部分に。
「やっ……だめっ……ひゃああっ!」
 包皮をむかれ、露出した部分に容赦なく舌を這わしてくる。
 今までとは一桁違う強烈な刺激が、股間から背筋を駆け上がる。
 冬弥くんがそこをきつく吸い上げたとき、
「あっ………あっ……うあっ…………あああぁぁぁぁっ!」
 私は大量の蜜を溢れさせながら、がくがくと体を震わせ、意識を真っ白な世界に溶け込ませていった……。


「はぁ……はぁ……はぁ……」
 まだ痺れるような余韻が体に残っている。
 冬弥くんが心配そうな顔をして、覗き込んでいた。
「理奈ちゃん……平気?」
「ん……」
 冬弥くんが優しく髪を撫でてくれた。
 少しずつ呼吸が楽になり、鼓動が収まってゆく。
 腰から下が抜け落ちるような、心地良い虚脱感だけが残った。
「はぁっ……」
「そんなに気持ちよかった?」
「うん……」
 冬弥くんに微笑み返す。と、冬弥くんの水着の中で、収まりきれずにいきり立つものが目に入った。
「冬弥くん……」
「なに?」
「次は、冬弥くんの番……」
「え……あ、ちょっと、理奈ちゃん」
 私は身を起こすと、逆に冬弥くんを押し倒した。
 テントのように水着を押し上げているものを、優しくさする。
 触れた部分は熱く、力強く、触れるたびにぴくりと震えた。
「うっ……」
 冬弥くんのうめき声は、なんだかかわいい。
 私が手を動かすたびに、短く詰めた息を吐いて、快感をこらえているようだった。
 私は冬弥くんの水着を下ろして、限界まで張りつめたそれを解放した。
 途端、勢いよくそれが跳ねて、私の手を打った。
「わ……」
「あ、ごめん……」
「ううん。ちょっと……びっくりしたけど」
 それを明るいところで見るのは初めてだった。でも、冬弥くんの一部だから、恐いことはない。
 私の中に入って、私に愛情を刻み込んでくれた部分だと思うと、愛おしささえ湧く。
 私はそっと、根元の部分に指を絡めた。
「ん……」
 指で直接触れると、その熱さに驚く。
 指の中で脈打ち、熱を孕んでいる器官。だけどとてもデリケートで、可愛らしい部分。
 優しく握りしめ、ゆっくりと擦りはじめる。
 徐々に速く、力をこめ、伝わってくる熱さに浸る。
 先端の鈴のような割れ目から、ぽつりと蜜が零れた。
 私はそれを指ですくい、先端部に絡めて塗る。
「く……うっ………」
 冬弥くんのこらえる声が、耳に心地良い。
「ね、ここ……気持ちいいの?」
 くびれた部分に左手も添えて、段差をなぞる。
「う……うん………。そこと、裏側と……」
「ここ?」
 裏側の筋の部分を、親指でぐりぐりと擦る。
「あぁ……」
 根元の方に指を滑らせ、振り回すようにしごく。
 ちょっと変な感触の下の袋も、手のひら一杯に掴んでこねる。
「あ……くぅ……」 
「ふふ……冬弥くん、女の子みたい……」
 玉のような雫を塗り広げると、揮発して強い男の人の匂いを放つ。
 それは私の中の牝の部分を、ひどく刺激した。
 体の奥に残っていた熱が、再び私の中で暴れ出す。
 腰を揺らすと、外に出ずにいた花蜜が、とろりと零れた。
「冬弥くん……」
 鼻が、匂いのもとに近づいてゆく。
 自然と舌が伸びる。
 灼けるような熱を、互いに感じ……。
「う……くぅっ………!」
 私の舌が、冬弥くんのものを、優しく舐め上げた。
 一度触れると、歯止めが利かなくなった。
「あっ………うぅっ………」
 冬弥くんの呻きも気にせず、私は一心不乱に冬弥くん自身を舐め上げる。
 裏側から先端部にかけて。
 根元からくわえ込んで幹の部分にキスマークをつける。
 くびれた部分には、掃除するように舌を滑らせた。
 その度に冬弥くんが小さく反応する。ビクビクと震えて、蜜を零す。
 その匂いが、また私を興奮させる。
 舌から熱さが伝わって、心を溶かしてゆく。
「はぁっ……」
 熱い息を零しながらも、舌は動くのをやめない。
 味はない。だけど、熱さと滑らかさが、触れる感触が、私の舌を惹きつける。
 もちろんその間も、私の手は冬弥くんの、根元の部分と、袋の部分を優しく愛撫する。
 愛おしさが募って、私は冬弥くん自身に頬を擦りつけ、そして、
「く……ううっ!」
 唇で、冬弥くんをくわえ込んだ。
 むわっとした匂いが口から鼻に抜け、焼け付くような体温が口中をたぎらせる。
 私は舌と、唇と、口全体を使って、冬弥くんを愛撫した。
 含んだ先端部分に舌を絡ませ、全体を舐め上げる。
 舌の表、裏、両方使って異なる刺激を与える。
 唇で締め付け、頬をすぼませて吸う。
「うあっ……」
 真空状態になるのがたまらないらしく、冬弥くんは腰を浮かせて快感に耐える。
 そんな態度が私を喜ばせ、調子づかせるのだけど。
 唇を前後に動かして、先端を滑らかに擦る。
 そして口が離れそうになる、本当にギリギリまで引いて、割れ目の部分から蜜を吸い上げる。
 先走りの液が、私の中に、何とも言えない味となって広がり、いっそう私を興奮させる。
 冬弥くんは砂地に爪を立てて、必死でこらえていた。
 だけど私は許さない。
 私は冬弥くんを追いつめようと、深く、それを喉の奥にまで迎え入れた。
「ううっ……!」
 冬弥くんが私の口の中で跳ねる。
 それを優しく、口全体で押さえ込んで、それからゆっくりと前後に唇を滑らせる。
 冬弥くんがじりじりするほど、遅く。
 喉に届きそうになるまで深く飲み込んで、幹に舌を這わせ、唇で締め付けながら、ゆっくりと戻す。
 全体を甘く吸い上げながら、くびれの部分を締め付け、先端部に緩い圧迫を加え、口から離す。
「あ……」
 物足りなさそうにした冬弥くんに、にこと微笑み、先端に軽くキスする。
 ぴくと弾けた幹を指で捉え、再び唇で飲み込みはじめる。
 あくまでゆっくりと、三十秒ほどかけて根元まで行き、頬の内側で先端部を弄ぶ。
 再び全体を軽く吸いながら、冬弥くん自身を吐き出してゆく。
 冬弥くんの内股が、びりびりと震えていた。
 私の唇が離れそうになったとき、不意に、
「理奈ちゃん、ごめんっ!」
 冬弥くんが叫んで、私の頭を股間に押しつけた。
 急に喉の奥を突かれて、むせそうになった。
 でも冬弥くんの我慢が限界に来たと分かったので、私は今までが嘘のように、激しく唇を動かす。
 口全体で強く吸いながら、唇で冬弥くんをしごく。
 すぐに冬弥くんのものがビクビクと脈打ちはじめ――。
「くっ………ううっ!」
「っ!」
 ものすごい勢いで、精液が迸った。
 熱く苦く、狂おしいほど雄の匂いを発散させている液体が、たちまち口の中一杯に広がる。
 私はそれを必死で啜り、飲み干す。
 喉の奥を熱い液体が流れてゆく快感に、私は酔ってゆく。
 だけどそれでも、飲みきれないほどの激しさで精液は吹き出し――。
「あぁっ!」
 私の唇から放たれたモノが、勢いよく跳ねながら白濁を撒き散らし、私の顔と、体とに、熱い迸りを散らした。
「はぁ………」
 私はぼんやりと、その熱さに酔いながら、頬についた白濁を指で拭い、唇に運んでいた。
「はっ……はぁっ……」
 冬弥くんも荒い息をついている。ただ、冬弥くん自身だけが、まだまだ物足りないと言わんばかりに、いきり立っていた。
 それに絡んだ白濁に、私は強く惹かれる。
 口の中のものを飲み下すと、私は、舌を伸ばして冬弥くんを綺麗にし始めた。
「わっ! り、理奈ちゃ……」
 刺激が強すぎるのか、冬弥くんは私の頭を強く押さえた。
 かまわず私は舌を這わせる。
 先端から根元、茂みに潜り込んだ液や、お腹に飛び散った分までも、綺麗に拭う。
 最後にまだ中に残っている分を吸い取って、飲み下した。
「ふはぁっ……」
「く……は………」 
 二人で深くため息をつく。日は沈みかけていた。
 だけど、体の中の滾りは、まだまだ静まりそうにない。むしろ、今の行為で私の中の女は、いっそう強く興奮していた。


「冬弥くん……」
「うん……理奈ちゃん……」
 軽く口付けを交わし、私は身を横たえる。
 胸が、腰が、体全体が、体の最奥が、熱く疼いて、冬弥くんを待ち望む。
 冬弥くんが、そっと私の秘所に触れた。
「ああっ!」
 そこは驚くほど濡れていた。
 冬弥くんの指は、ぬめりを絡めて滑り、割れ目の奥へと押し入る。
 くちゅり、くちゅりといやらしい水音が立つ。
「やっ……あっ………」
 冬弥くんは指を増やして、私の中を掻き回す。肉の中で指が開き、くねり、擦り立てる。
 親指が固くなったままの真珠に押し当てられ、蜜の助けを借りてくるくると円を描く。
「は、あ、あ……ああっ………」
 腰が勝手にいやらしく動く。求めるように背中が反って、冬弥くんの指を深く受け入れる。
「や……やだっ……あっ…………冬弥、くんっ……」
 だんだんと、言っていることがめちゃくちゃになり、ただひたすらに体が快楽を求める。
 自分の胸を自分で掴んで、乳首を押し潰す。そそり立った乳首を指で挟んで、きつくひねる。
「はぁんっ!」
 自分で産んだ快感で、わけがわからなくなっていく。
「と、冬弥くん……冬弥くんっ……!」
 私の指と同じように、冬弥くんの指が、私の一番敏感な部分を摘んだ。
 親指と人差し指で摘んで周りをくすぐり、ちょんと突き出た部分をもう片方の指が擦ってゆく。
 痺れるような快楽が、私の腰を支配した。
 なにかがだんだんとせり上がって、私を破裂させようとする。
「や……やぁっ……だ、だめっ! お願い、冬弥くんっ……! やだっ……」
 私が半泣きで懇願したのを見て、ようやく冬弥くんは指を止めてくれた。
「お、お願い……お願いだから……」
 冬弥くんは頷くと、私の前髪を指で梳いてくれた。
 そういう些細な優しさが、とても嬉しい。
 私の呼吸が落ち着くのを見計らって、冬弥くんは、自分自身を私の秘所に当てた。
 ぬるりとした感触が表面で滑り、互いに腰を震わせる。
「あっ、ふ………」
 ぴたりと、冬弥くんのものが私の割れ目に押し当てられる。
「理奈ちゃん……」
 私は目を閉じたまま、頷いた。
「……んっ」
 熱く灼けたものが、私の中に楔のように押し入ってきた。
「はああぁっ……」
 冬弥くんが、熱く、強く、私の中を蹂躙し、媚肉を擦ってゆく。
 体が歓喜の絶叫を上げる。溢れる雫が冬弥くんを優しく包み、手助けをする。
 ぬかるんだ肉が冬弥くんに絡みつき、それが引き剥がれてゆく感触が、たまらなくここちよい。
 襞をめくり、体の中をいっぱいに満たし、最奥にまで貫いて、冬弥くんは一旦動きを止めた。
「ふはぁっ………」
 私は随喜の涙を流し、冬弥くんを抱きしめた。
 激しくキスを交わし、互いを掻き抱く。
 そのまま冬弥くんの腰が動き出し、私を快楽に引きずり込む。
 冬弥くんは私の片足を抱え、大きく開いた。つながりがいっそう深くなり、何度も何度も体の奥を突いてくる。
 私も突き込んでくるタイミングに合わせて、腰を送り出す。
 上手く合うと、倍の速度で擦られて、ひどく深い快感と充足感が体を満たす。
「ああっ……冬弥くん……冬弥くんっ……」
「理奈ちゃん……」
「ひゃあんっ!」
 冬弥くんが空いている手を繋がった部分に伸ばして、私の敏感な部分を摘んだ。
 私は体の一番奥と、外側とを両方刺激され、たちまち上り詰めてゆく。
 溢れた蜜が冬弥くんを包み込み、攪拌されて淫らな音を立てる。
「や……あっ! いいっ! 冬弥くんっ……いいのっ!」 
 冬弥くんが私の足を上に向けた。やや単調だった動きが、急に横向きに変化して、私の蜜壺を抉った。
「ああっ……」
 私も腰を不規則にくねらせて、強い刺激を得ることに夢中になる。
 と、冬弥くんの指が、股間から外れた。
「……?」
 急に物足りなさを覚える。
 もちろん突き込んでくる動きは私の中を快くかき回すのだけど、もっと強烈なものを体が求めていた。
「と、冬弥くん……」
 震える声で哀願すると、冬弥くんは再び指で触れてくれた。
 だけどそれは腰の前でなく……後ろ側。足を持ち上げられて、浮いた部分。
「……っ!」
 蜜に濡れた冬弥くんの指が、お尻の割れ目に潜り込んできた。
「とっ、冬弥くんっ! そこはっ……くっ」
 お尻の筋を上下に擦る冬弥くんの指。
 まるでもう一つの淫唇の様に割れたそこには、同じように穴がある。
 冬弥くんの指はそこに狙いを定め、きゅっ、きゅっ、っと圧迫した。
「や……やだっ、そんなとこっ!」
「本当に、いや?」
 冬弥くんは意地悪に聞いてくる。答えられるはずがない。そんな、そんなところが……気持ちいいなんて。
 普段めったに触れないその部分を、冬弥くんの指が襲ってくる。
 蜜をまぶし、圧迫し、時折繋がっている部分から蜜をすくいとって、また塗りたくる。
 私は不条理な異質感と、それに交わって上がってくる快感とに混乱し、狂ったように足をばたつかせる。
「やっ……あ、くぅっ………んっ、んんっ………」
 拒絶反応から、きゅっと後ろの穴を閉じる。すると前の媚肉も力を込めて冬弥くんを握りしめる。
 それが楽しいのか、冬弥くんは何度もお尻の穴をつつき回し、揉み込んでくる。
「あっ……うあっ……くっ……」
 拒絶感はもう消えていた。
 すっかりほぐれた後ろの穴に、ちゅる、と指が潜り込んでくる。
「はぁっ!」
 指が、私の中に押し入ってくる。誰の侵入も許したことのない内壁を、冬弥くんの指が擦る。
 圧倒的な異質感と違和感と快感。それらがない交ぜになって、冬弥くんの指がかき回す。
 お尻の穴から這い上がってくる。
 私は髪を振り乱し、腰を揺すって快感から逃れようとする。
 だけど冬弥くんは、私の片足をがっちりと抱え込んで離さない。
 腰の動きと指の動きを交互に、私の中へ、外へと出し入れする。
「やっ、やだぁっ……! わっ、私……私……ん、くぅっ!」
 張りつめた胸が弾んで、ここもいじってと訴える。
 だけど冬弥くんは手一杯で、そんなことをしている余裕はない。
 再び、自分の手で自分の胸を慰める。
 きゅっと根元を絞り、突き出た先端を痛いほど押し潰す。
「んふっ……!」
 冬弥くんの指は根元まで埋まり、お尻の穴を深く抉っていた。
 蜜の助けを借りて、滑らかな腸壁を指が滑ってゆく。
 まるで性交のように、淫らに出し入れされる冬弥くんの指。
 そして産まれる快感も、股間から生み出されるものと、ほとんど同レベルで、そのくせ異質だった。
 胸と、股間と、お尻と、異なる場所から生まれた刺激が、私の体で快感の三重奏を奏でる。
「あっ……あっ……あっ……」
 だんだんと、快感が私の体を押し流してゆく。
 なにか白い光のようなものが、私の中に溜まって、溢れそうになってくる。
「だっ……だめ……私……冬弥くんっ!」
 もう零れそうになっているのに、そこを冬弥くんのものが激しくついてくる。
 揺れて、波立って、飛沫が跳ねる。
 体中のどこもが、熱く沸騰して煮えたぎるようだった。
「はあぁっ……」
 無理に体を押し曲げて、冬弥くんがキスしてきた。
 冬弥くんとの繋がる場所が、また一つ増える。
「んっ……ふぅっ……はあんっ!」
 私は狂ったように舌を絡めた。 
 やだっ……だめ、もう、もう、こらえきれないっ…………冬弥くんっ……。
 冬弥くんの腰の動きが激しくなって、いやらしい音が余計に高く響く。
「冬弥くんっ……冬弥くんっ……」
「理奈ちゃん……っ」
「私……私、もうだめ、もう……もう……ああっ……い、いっちゃうよぉ……」
「うん、俺も……俺も……理奈ちゃん……っ!」
「ああっ……やっ、やだぁっ………私、私………うあぁっ………!」
「理奈ちゃ……」
 冬弥くんが、お尻の穴を強く抉ってきた。同時に私の柔肉を深々と貫く。
『……っ!』
 冬弥くんのものが私の中で勢いよくはね、暴れ狂った。
 それが私の中の最後の抵抗を押し流し、快感を溢れさせる。
「あっ……ああっ………あああぁぁっ〜〜〜〜〜〜っ!」
 びくん、びくんと私の中で震えながら、白い液体を吐き出してゆく冬弥くん。
 子宮を灼きそうな熱い液体が流れ込んで、私の零した蜜と混じり、結合部からこぼれ落ちる。
 私の体も冬弥くんのものを断続的に握りこんで、柔らかい肉で揉みしごいていた。
 その度に冬弥くん自身もぴくぴくと動いて、優しい快感を発生させる。
「はっ…………ああっ……」
 熱い満足感と、痺れるような幸福に満たされ、私は弓なりに反った体を、とさ、と地面に下ろした。
 荒い息をつきながら、もう一度、簡単な口付けを交わす。
 繋がった部分で、冬弥くんが優しく、かわいくなってゆく。
 それでも私の体は、冬弥くんを握りしめ、離さない。
 永遠にこの人を繋ぎ止めておきたいという、願いそのままに。
 
 いつの間にか、すっかり陽は落ちていた。
 青とオレンジと紫が混じり合った空で、気の早い星が淡い輝きを放っていた。
 波の音が、静かに私たちを包んでいた。
「冬弥くん……少し泳ごう」
 私は裸のまま立ち上がって、冬弥くんを誘った。
「え、でも……」
「そういう気分なの」
 駆け出すと、すぐ後を冬弥くんが追ってくる。
 波間に逃れる私を捕まえて、抱きしめる。波に洗われながら、星の下で口づけを交わす。
「ん……」
 すぐに唇を離し、見つめ合う。
「理奈ちゃん……」
「冬弥くん……」
 温もりに体をうずめる。男の人の力強い体が、私を受け止める。
 この人だ……。
 この人さえいれば、私は何もいらない。他の全てを失ってもかまわない。
「冬弥くん……」
 もう一度、愛おしい人の名前を呼ぶ。
「なに?」
「愛してる……世界が滅んでも、どれだけの時がたっても、永遠に、あなただけを……」
「うん……俺も……」
 冬弥くんが強く私を抱きしめ、髪を撫でてくれる。今はその優しさに、ただ浸った。
 永遠なんて、そんなにたくさんあるものじゃない。
 どれほど強固に信じても、脆く、移ろいやすいのが人の心だ。
 冬弥くんも、私も、それは例外じゃない。
 だけど……。
「うん……信じてる。信じてるから……」
 この愛情が、星よりも長く続くように、願いを込めて……。
 もう一度、誓いをするように、口づけをした。


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